更年期パート2 ―― 症状タイプ別「漢方薬」の選び方男性更年期と女性更年期の違い
前回、男性更年期は「ダウナー系」、女性更年期は変動期の「アッパー系」→その後「ダウナー系」という症状の出方の違いについてまとめました。今回はその症状パターンに合わせて、どんな漢方薬が選ばれやすいのかを整理してみます。
漢方の考え方:「証」に合わせる
西洋医学が「病名」に薬を合わせるのに対し、漢方はその人の体質(証)や今出ている症状のパターンに薬を合わせるのが基本です。特に重要なのが「虚実(きょじつ)」という体力・体質の物差しです。
虚証(きょしょう):体力があまりない、冷えやすい、疲れやすいタイプ
実証(じっしょう):体力があり、がっしりしている、のぼせやすいタイプ
中間証:その中間
同じ「更年期症状」でも、この体質によって選ばれる処方が変わってきます。
アッパー系症状(のぼせ・イライラ・不安・動悸)向け
変動期に自律神経が興奮しやすいタイプの症状には、気の巡りを整えたり、うっ血(瘀血)を流したりする処方がよく使われます。
加味逍遥散(かみしょうようさん)イライラ、不安感、不眠、のぼせなど、ストレスがからむ精神症状全般に幅広く使われる代表格。中間証〜やや虚証向け。女性更年期の第一選択としてよく挙がりますが、自律神経が乱れがちな男性にも用いられることがあります。
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)体力がある実証タイプで、のぼせ、頭痛、肩こり、月経に関するトラブルなど「瘀血(血の巡りの滞り)」の症状が強い場合に選ばれます。
女神散(にょしんさん)のぼせと同時にめまいや動悸を伴うタイプに使われることがある処方です。
ダウナー系症状(倦怠感・意欲低下・抑うつ・冷え)向け
エネルギーが枯渇している「虚証」寄りの状態には、体力や気力を補う処方が中心になります。
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)疲労感が強く、食欲もわかない、気力が出ないというタイプに。男女問わず「なんとなく調子が出ない」状態によく使われる処方です。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)冷え性、貧血気味、むくみやすいなど、体力があまりない虚証タイプの女性によく使われます。
八味地黄丸(はちみじおうがん)加齢による「腎虚(じんきょ)」―― 足腰の衰え、頻尿、冷え、性機能の低下など ―― に対応する処方で、男性更年期(LOH症候群)でよく名前が挙がります。
牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)八味地黄丸に似ていますが、むくみやしびれ、下肢の冷えが強い場合により向いているとされます。
十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)疲労が強く、病後の体力低下のように「気」も「血」も不足している状態に用いられる、補い系の代表処方です。
症状タイプ別 早見表
症状の傾向 | 体質(証) | 代表的な漢方薬 |
のぼせ・イライラ・不安・動悸 | 実証〜中間証 | 加味逍遥散、桂枝茯苓丸、女神散 |
倦怠感・意欲低下・抑うつ・冷え | 虚証 | 補中益気湯、当帰芍薬散、八味地黄丸、牛車腎気丸、十全大補湯 |
選ぶときの注意点
漢方薬は「症状」だけでなく「体質」との組み合わせで選ぶものなので、同じ「イライラ」でも人によって合う処方が違います。ドラッグストアでパッケージだけを見て選ぶよりも、漢方に詳しい医師や薬剤師に相談し、自分の証を見立ててもらった上で選ぶのがおすすめです。保険適用で処方してもらえる場合も多く、体質に合えば数週間〜数ヶ月で変化を感じられることもあります。
また、漢方薬も医薬品である以上、他の薬との飲み合わせや持病によっては注意が必要です。自己判断で長期間飲み続けず、体調に変化があれば処方元に相談するようにしましょう。
※本文中の「アッパー」「ダウナー」という表現は、症状の傾向を直感的に理解しやすくするために用いた比喩的な表現であり、医学的・薬理学的に厳密な分類ではありません。実際の更年期症状は、エストロゲンなどのホルモン変動に伴う自律神経系・神経伝達物質系の複合的な調節不全によって生じるものであり、単純な興奮・抑制の二軸では説明しきれません。症状への対処や治療については、自己判断せず医療機関にご相談ください。

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